前編では、ご筆者の出身地でもある愛知県の日本酒、蓬莱泉（ほうらいせん） 純米大吟醸「空（くう）」を説明させていただきました。
日本酒＝愛知というイメージはあまりないかもしれないのですが、最近ブームになっているブランドがいくつもあり、隠れた名酒の産地。
後編は蓬莱泉（ほうらいせん） 純米大吟醸「空（くう）」の酒蔵である、関谷醸造（せきやじょうぞう）と、蔵からも近い鳳来寺山という神聖な霊山のお話もいたしましょう。

◎和醸良酒を合言葉に、伝統と最新のテクノロジーを駆使し醸す蔵、関谷醸造株式会社さん

ご紹介した蓬莱泉「空」が醸されている関谷醸造さんは、愛知県北設楽郡（きたしたらぐん）に酒蔵（さかぐら）があります。
関谷醸造さんのホームページに、面白い試みがされており、蔵の内部360°見渡せるようになっていて、それを見てもわかるのですが、関谷醸造さんの蔵は、蔵といいながら伝統的な風情はほとんど見当たりません。高品質な日本酒を安定供給するため、緻密なデータをしっかり管理できるよう、お酒造りの工程を徹底的に機械化されたそうです。

伝統と合理化・機械化は、一見相反するものに見えますが、伝統的な酒造りの技を未来に残すという強い意志を持ってはかった合理化・機械化は、「造る人」にも優しい酒造りを実現しています。細かい目配りが必要で、人の労力を大きく要した部分を積極的に合理化することで、「造る人」にも優しい酒造りが実現されたのだそうです。

関谷醸造さんは、酒造りにおいて、「和醸良酒」という言葉を掲げておられます。
「和醸良酒」とは、人の和は良酒を醸す、蔵人（くらびと）のチームワークが良い酒を造るという意味です。人に優しい酒造りが実現されたからこそ、分業の多い酒造りにおいても、より良いチームワークが発揮され、「空」の味わいを、より深いものにしていると感じます。

またこの蔵は、いくつかの珍しい試みも行われているので紹介します。

その一つが、普通は蔵人（くらびと）しか味わえない生原酒の量り売りし、一般の方にも味わえるようにしていること。
通常販売されるお酒は、火入れ（ひいれ）という加熱殺菌と、ラベル表示されているアルコール度数への調整として加水されることが多いのですが、その工程を経ない、しぼりたて状態の生原酒を、量り売りで販売されています。

もう一つが、酒造り体験コースの実施。こちらは、半日や一日、またとことん酒造り体験ということで二日間にわたるものなど、さまざま開催されているようです。気になる方はHPで実施日程を確認し参加してみてくださいね。

関谷醸造さんの蔵が360°見渡せる映像
http://www.houraisen.co.jp/virtual/#/pg26
量り売り
http://www.houraisen.co.jp/ja/loose.html
日帰り酒造り体験コース
http://www.houraisen.co.jp/ja/ginjo/seminar01.html

◎霊山鳳来寺山の一角に鎮座する、鳳来山東照宮と家康の出生

蔵からも近い鳳来寺山は、日本一の樹高を誇る傘杉（かさすぎ）で有名な、神聖な霊山です。
仏・法・僧（ぶつぽうそう）と鳴いているように聞こえる声のブッポウソウといわれるコノハズクの里でもあります。

声のブッポウソウコノハズク

声のブッポウソウといわれるのは、この鳥の鳴き声で鳴いていると勘違いされブッポウソウと名付けられた鳥が他にいるためです。

鳴いていると勘違いされたもうひとつのブッポウソウ

そして、この山に鎮座する鳳来寺の一角に、三大東照宮の一つといわれる鳳来山東照宮があります。ここは、家康の父母である松平広忠（まつだいらひろただ）と正室於大の方（おだいのかた）が、子のできないことを憂い、祈願のために夫妻そろって鳳来寺にお参りし、間もなく家康を懐妊したという言われを聞いた、三代将軍家光が、家康を敬い建てた東照宮です。こうした伝説にあやかって、子宝を祈願する絵馬も境内には多く見られます。

家康の出生は壬寅年寅月寅の日にあたる天文11年（1542年）12月26日の寅の刻（午前5時頃）であったとされていて、その家康誕生とほぼ同時刻に、鳳来寺の薬師堂の本尊である薬師如来を守護する十二神将の寅神でもある真達羅大将（しんだらたいしょう）の神像が忽然と姿を消した逸話から、家康は真達羅大将の化身であったとも言われています。

この秋の連休に、美味しい日本酒が作られている、家康出生にまつわる伝説の地を訪れてみるのもいいかもしれません。

鳳来山東照宮
http://www.tees.ne.jp/~horaitosyogu/

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