第6回ジオマンシーショートストーリー ケース6「小吉」〜ショウタの場合〜
ジオマンシーは、アラビア生まれのとても当たる占いです。ジオマンシーの16のシンボルにまつわる物語を、一話完結のショートストーリーとしてご紹介していきます。
今回は、「小吉」と言うシンボルにまつわるお話です。
心温まる結末まで、じっくりと目を通してくださいね。
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第6回ジオマンシーショートストーリー
ジオマンシーは、アラビア生まれのとても当たる占いです。ジオマンシーの16のシンボルにまつわる物語を、一話完結のショートストーリーとしてご紹介していきます。
ケース6「小吉」〜ショウタの場合〜
部署の飲み会で、女性主任が占いをしてくれた。
「ブレスレットで占うのよ」
ジオマンシーという占いで、結構当たるらしい。
一年目の新人のショウタも占ってもらった。
主任は、金色のチャームがついたブレスチェーンをテーブルの上に落とすと、笑みを浮かべた。
「ふふ。小吉ね」
「小吉ぃ〜?」
「いい結果よ。ショウ君にぴったりの」
ブレスチェーンをゆらしながら目を細める主任に、ショウタは食ってかかった。
「ショウだからショウキチなんてだじゃれ、いらねーっすよ」
「違う違う。小吉っていうのはね、確かに大吉よりは幸運は小さいけど、他力運なのよ。人が力を貸してくれるの。君が困ったときには、このチームのみんなが助けてくれるわ」
主任はショウタの5才上。くっきりとしたアーモンド型の目に、赤いリップを塗った唇。一目を惹く美人だ。仕事もできるし、部下からの信頼も厚い。自分には高値の花だ……ショウタは、腹に力をこめた。
出典: Pixabay
「おれは。人の力を借りたくないんっす。おれはおれの力で、仕事をやりとげたいんす。そのぶん人の何倍もがんばります。残業だってなんだってやりますから」
主任の目が優しく細くなり、赤い唇が、カーブを描いた。
「期待しているわよ。ショウ君」
それなのに。ショウタは、ドジをやらかした。ショウタが悪かったわけではない。小さな不具合をその場でリカバリーするスキルと経験値が足りなかったのだ。あせりから、余計にみんなの仕事を増やしてしまった。
主任も、先輩も同僚もみんな残業して、サポートしてくれた。
先輩は、クライアントに一緒に状況説明に言ってくれた。同僚は自分の仕事を後回しにして手伝ってくれた。
みんなのおかげで、不具合を取り戻すことができた。
出典: Pixabay
一段落したところで、
「すんませんでした!」
ショウタは、みんなに頭を下げた。
「いいってば」「大丈夫」
みんなの優しさがショウタには、余計にくやしかった。
「おれ……こんなんじゃ」
うつむいたショウタの背中を、先輩がバンバンと叩いた。
「主任にかっこ悪いとこ見せちまったって、思ってんだろ。おまえら早くくっついちまえよ!」
ショウタが驚いて顔を上げると、主任が頬を赤らめていた。
「主任……」
「誰の力も借りない孤高の英雄より、みんなが助けてくれる人のほうが、あたしはいいと思うのよ」
主任の瞳が、ぬれたように輝いていた。
ショウタは初めて、小吉という占い結果をまんざらでもないと思った。
ジオマンシーシンボル「小吉」のキーワード
小吉運。他力運。人に助けてもらえる。
*画像は「ジオマンシーカード」「ハピタマ!」です。
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占い師・作家:高橋桐矢