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ジオマンシーショートストーリー

ジオマンシーは、アラビア生まれのとても当たる占いです。ジオマンシーの16のシンボルにまつわる物語を、一話完結のショートストーリーとしてご紹介していきます。

ケース14「赤」〜カヨの場合〜


出典: Pixabay

「すごく当たるんだって! ジオマンシーっていう占い。みてもらおうよ!」

友達にさそわれたけれど、カヨは笑ってやりすごした。

「わたしはいいわ」

占いは嫌いじゃない。興味はあるけれど占ってもらう気はない。まして、当たる占いなら。

数日後、1人で出かけた日に、カヨは、書店でジオマンシー占いの本を見つけた。

買って帰って家でひとりで占ってみた。

「彼とのこれから……」

紙に点々を書いて占う、不思議な占い。友達は何度もみてもらって、すごく当たっていたらしい。

そんなに当たる占いに、友達と一緒に行ったりしたら……何を言われるかわからない。

友達にも親にも、誰にも言えない、あのコト。こっそり1人で占ってみる。

ドキドキしながら、点々をかぞえる。

本をみて、結果を確認する。出たシンボルは、「赤」だった。

「赤……?」

赤の解説ページを読んで、カヨは思わず声を出して笑ってしまった。

「悪事に吉だって!」


出典: Pixabay

カヨの彼には、奥さんがいて、カヨにも夫がいる。数年前に知り合って、深い関係になった。ダブル不倫だ。お互いの配偶者はそのことを知らないし、離婚するつもりもない。けれど、彼と別れるつもりもない。

カヨの携帯が鳴った。夫からのメッセージだった。

「今日は大丈夫だった? 夕食は出前にしようか」

昨夜、体調が悪いからと、夫の誘いを断った。気遣ってくれる優しい夫だ。

カヨは、「ありがとう」というスタンプを送った。

体調は悪くない。体が火照っているだけだ。

ふいに、彼の熱い吐息を思い出す。体が熱い。

抱かれたいと、強く思う。

カヨは、携帯から、彼にメッセージを送った。

「今夜、会いたい」

すぐに返事が来た。

「○○ホテルで待ってる」

心臓が脈打つ。ドクッ、ドクッ。血がさわぐのだ。

夫はいい人。分かっている。

でも、彼とは別れられない。

占い結果は、悪事に吉。彼との恋は、これからもうまくいく。夫にも誰にも内緒のまま。

カヨは、カップについた、真っ赤な口紅のあとを、指先でぬぐった。


出典: Pixabay

堕ちてゆく覚悟はできている。

 

ジオマンシーシンボル「赤」のキーワード


血。熱情。不道徳。争いと不和。

 

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占い師・作家:高橋桐矢

WRITTEN BY 高橋桐矢

高橋桐矢
高橋桐矢(たかはしきりや)占い師兼作家。 雑誌「ムー」(学研プラス)に毎月の占い掲載。 著書『占...