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第7回ジオマンシーショートストーリー

 

ジオマンシーは、アラビア生まれのとても当たる占いです。ジオマンシーの16のシンボルにまつわる物語を、一話完結のショートストーリーとしてご紹介していきます。

 

ケース7「獲得」〜ヨウコの場合〜


出典: 写真AC

「ねえ、聞いて聞いて。占い師にさあ、言われちゃったのよ」

ヨウコは、居酒屋の席に着くなり、口を開いた。

向かいに座るのは、高校の時の同級生の40男。あごには無精ひげ、髪も少し薄くなってきた、くたびれた中年男。おせじにも格好いいとはいえない。

そういうヨウコも、同じ年だから、もう若くはない。

「あたしの今年の恋愛運は『獲得』なんだって。ついに理想の恋人を獲得できるって」

「よかったじゃん。ずっと言ってたもんな、医者か青年実業家って」

ヨウコは、ちらりと彼に目を向けた。

「あたしも今年40才になるじゃない? そろそろ幸せになってもいいと思うのよ」

 


出典: 写真AC

レモンハイを飲み干した彼がお代わりを頼んだ。

「ヨウコ、飲み物はまだいい? あ、チーズ餅好きだろ。頼んどいたから。つくねと軟骨も」

5年前、前の奥さんと離婚したばかりの彼と、近所の居酒屋で再会してから、こんなふうに週1くらいで会っている。

彼がポケットから何か取り出した。

「こないだ欲しいって言ってた限定品のガチャ、とってきたぜ」

「やったあ!」

「あとゲームの新作情報仕入れたんだけど、聞く?」

「聞く聞く!」

ヨウコは、テーブルに体を乗りだした。

居酒屋のチープな料理もおいしい。自然体でいられる心地よさに、レモンハイがすすむ。

あっというまに閉店時間近くなっている。彼といると時間がたつのが早い。

空になった皿を見ながらヨウコはつぶやいた。

「いつもあたしの欲しいものをくれるよね」

彼が苦笑する。

「ガチャとか安いものばっかりだけどな」

「うん。でもそれが欲しいんだよ、きっと。あたし」

ヨウコは意を決して顔を上げ、彼と向き合った。

「あたし、あんたのこと、欲しいんだと思う」

彼の顔に驚きが浮かんですぐ、赤みが差した。

「え、おれ、医者でも青年実業家でもないけど、いいのかよ」

去年、彼に「一緒になろうか」と言われたとき、ヨウコは冗談と笑い飛ばした。

そのときは妥協したくないと思ったのだ。自分にふさわしい理想の恋人がどこかにいると思っていた。

でも今、妥協でもあきらめでもなく。

ヨウコは、テーブルの上の彼の手をにぎった。

「自分が本当に欲しいものが何か、ようやくわかったの」

ヨウコの言葉に、彼ははにかんだ笑顔を浮かべた。

「乾杯しよう!」

グラスを重ねた瞬間、ふたりの心が重なる。

 

ジオマンシーシンボル「獲得」のキーワード

収穫。満足。満たされた心。

*画像は「ジオマンシーカード」「ハピタマ!」です。

 

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占い師・作家:高橋桐矢

WRITTEN BY 高橋桐矢

高橋桐矢
高橋桐矢(たかはしきりや)占い師兼作家。 雑誌「ムー」(学研プラス)に毎月の占い掲載。 著書『占...