孫子の兵法の第一節には次の名言があります。

百戦百勝は善の善なるものに非ず

孫子は紀元前500年ごろの中国春秋時代の兵法家、軍師として現代までよく知られた人物です。当時の中国の戦乱の中で、いかに勝ち、負けるのかを知っていました。
その孫子ですら、兵法の第一節に「百戦百勝」はありえないことだと説いています。新入社員として、仕事をすれば当然、失敗も多くなってしまうのは当然のことです。もしかしたら、大きなミスをしてしまうこともあるかも知れません。
しかし、そこでめげてしまっては次のステップにつながりません。孫子も、決して最初から現代まで名前を残すような名軍師ではなかったのです。多くの苦難や、長い修練があってその高い評価や名声を得ることができました。
今回は心理学ライターの響孝二が、孫子の名言を借りてお話ししましょう。





孫子の時代から失敗は当たり前だった!?


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孫子の思想の中には「予め失敗することも予期している」という価値観があります。新入社員の時には、完全に仕事ができる方はほぼ皆無です。それよりも、仕事を覚えるだけで手一杯で周囲の先輩や上司に迷惑をかけることも多いでしょう。私も新人の新聞記者時代に大きなミスを何度もして、上司から辛い叱責を受けたことをはっきりと覚えています。
そこで何度もつらい思いをしましたが、今にして考えればそのとき、自分に欠けていたもの、足りなかったこと、ということがその厳しい叱責や自分の中で反芻して、何度も繰り返し取り組むことで自分の財産になったことも少なくないと思います。

仕事のミスは経験と解くべし


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また、孫子は次のようにも説いています。

彼を知り己を知れば百戦して危うからず

私の好きな名言の一つですが、自分の状況、周囲の状況を正しく理解すれば、失敗さえもある程度、余地できますし覚悟した上で仕事をできる、ということにつながると私は解釈しています。新人のころには大きな失敗をすることもあるでしょう。そのことをどこか、頭の片隅に入れておき、もし何かミスをしたときには素直に謝罪する気持ちを持てば、次のステップにつながります。

大人のお酒の世界のBARのなぞなぞに「仕事でミスをしない人はどんな人」という問題があります。

正解は「仕事をしない人」です。
仕事をしている限り、何かしらミスをしますし、辛いこともあるでしょう。ですがそれは、仕事をしているからこそ得られる経験であり、将来の皆さんには必要なステップだと私は思います。もし、仕事で失敗し、くじけそうになったときは多くの先人たちも同じ苦労をしてきて今日があると、励みにしていただければ幸いです。





心理学ライター:響孝二

WRITTEN BY 響孝二

響孝二
新聞記者、心理学ライター 1977年生まれ 北海道出身 公立高校を皆勤賞で卒業後、国立室蘭工業...